ホームドアの普及が進まないのは、主に二つの理由が存在します。
一つ目はコストの問題です。一駅につき、数億円程度の費用が必要で、さらに重たいホームドアを設置するにあたり、耐久性のない古いホームの場合では、補強費用も必要です。車両工事費(定位置停止装置)なども伴い、さらに大きな負担がかかります。
例えば、山手線(29駅)にホームドアを設置する場合、補強費用や車両工事などを含め、概算で約550億もの経費が必要です。
二つ目は構造上の問題です。
つきみ野駅に貼られていたポスターです。
田園都市線の場合、車両のドアが4つのものと6つのものがありますので、既存(2014年6月2日撮影)のホームドアでは対応できない現状があるのです。
山手線の場合、ホームドアに車体を対応させるため、まだ古くない6ドア車両を廃止にしています。(E231系はたったの5年で廃車となりました)6ドア対応のホームドアを設置すると、臨時で入ってくる京浜東北線(4つドア)に対応できませんので、2010年から4つドアに変更しているのです。
よって、東京メトロの銀座線、有楽町線などは、同じ電車の規格で運行しているので、ホームドアの設置がスムーズです。
そういう状況の中、開発されたのが昇降式ホームドアなのです。
転落防止のため、普段はロープ柵が降りている状態です。しかし、電車がつきみ野駅の止まる時だけ、この柵が昇り電車に乗れるというわけです。
これなら、ホームの補強作業を行わなくて済みますので、4つドアや6つドアでも対応する事が可能です。(つきみ野駅のホームドアは、国の補助金を利用して実験的に行っています。)
国土交通省の資料です
ホームドアの設置数に注目です。
平成22年が484件、
平成23年が519件、
平成24年が564件、
平成25年が583件となっており、
伸び率が鈍化しています。コストだけの問題ではないことがわかります。
東武鉄道船橋駅のホームドアです。点字で1号車・1番ドアと書かれていました。(2014年5月25日撮影)
○昇降式ホームドアの問題点
視覚障がい者の方がドアの位置がわからない点があげられます。上の画像のとおり、一般的なホームドアの場合、ドアの隣に点字でメッセージが書かれていますので、視覚障がい者の方でもわかります。
点字に変わる、新たなメッセージが必要になると思います。
○安全面の問題
このロープ柵はステンレス製で、かなり硬いものになっていました。この柵が体にぶつかると、命にかかわる大事故に発展しかねません。柵そのものを改良する必要があるのではないかと思いました。
平成23年に公表された国土交通省の資料によると、実際に転落事故を起こしてしまった人は約5%。危険な思いをしたのは約20%となっています。転落事故は、決して視覚障がい者だけの問題ではないのです。
転落事故を防ぐためにも、
安全なホームドアが少しでも多く設置されることを望んでいます。
著者 出川 雄一(ツイッター) 障がい者の工賃を高める仕組み(福祉資本主義)を考え、実践しております。主に点字名刺・点字印刷・ハンドメイドなど。障がい者ブランド(ココリティ)の活動も行っています。
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